8/19更新
Rhipsalis agudoensis HU 821
リプサリス・アグドエンシス
Field No. HU 821
Collector : Leopoldo Horst / Kurt-Ingo Horst
Original locality : Agudo, Rio Grande do Sul, Brazil
この植物には、少し変わった物語があります。
HU 821。
もともとブラジル南部、Rio Grande do Sul州 Agudo で採集された「Rhipsalis sp.」として伝わったコレクションナンバーです。
そして、このHU 821こそが、2003年に Rhipsalis agudoensis が新種として記載された際の基準となったコレクションです。
植物はやや硬くしっかりとした枝を広げ、やがて下垂。
枝は扁平になるだけではなく、3~4、時には5つの稜を持つ立体的な姿となり、アレオーレの部分で縁が切れ込む独特な形を作ります。
開花すると約1.5~2cmの白花。
細身の花被片を放射状に広げ、結実すると果実は淡色から日照によってマゼンタピンクへと色づきます。
しかし、この植物の面白さはここからです。
種小名 agudoensis は、HU 821に付されていた「Agudo」という産地に由来します。
ところが後年、研究者たちが現地を追跡していく中で、この産地情報そのものに疑問が生じました。
そして再発見と調査の結果、現在では本種はブラジル南東部、Rio de Janeiro周辺に自生する種と考えられています。
これは、
「Agudoのリプサリス」という名前を持ちながら、Agudo産ではなかった可能性が高いリプサリス。
それでも学名には、その発見史がそのまま残りました。
さらに分子系統研究では Rhipsalis pachyptera に極めて近い位置に入り、一時は同種として扱う考えも示された植物です。
その後の再発見と研究を経て、現在は再び Rhipsalis agudoensis が独立種として認められています。
華やかな園芸品種とはまったく違う魅力。
HU 821というひとつのフィールドナンバーを追いかけると、採集、新種記載、産地の謎、再発見、分類の再検討まで繋がっていく。
植物を育てると同時に、その植物が辿ってきた歴史まで手元に残せるリプサリスです。
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